駅に着いたらまず観光案内所に行き、巡礼用の簡単な地図をもらった。そこには秩父の大まかな地図が描かれており、34ヶ所のお寺とその間の距離・所要時間が書かれていた。図書館から借りたガイドは持ってきていたが、この地図を頼りにすることになりそうだった。
私は歩いて34ヶ所を廻るつもりで、そのため一番目から順番に廻りたいと思った。
駅前のバス停で一番〈札所〉である『四萬部寺』行きのバス時刻を調べて、まだ時間があったため食事や買い出しをしたりしてゆっくりとバスを待った。
そろそろ夕方という時間帯で、日が暮れてしまうのはあと数時間だ。出足が随分遅れてしまっていた。お寺は午後5時になると閉まってしまうとのことだ。
一人でバスを何十分も待っていると、いらぬ心配事が浮かんできた。
今日は幾つ廻れるのだろう、どれくらい大変なものなんだろう、体力は持つだろうか、食べるところはあるだろうか、巡礼の作法はきちんと出来るだろうか、今夜野宿する場所はあるだろうか、、
そして何より〈三十四〉という数字がとても大きなものに思えてきた。
出発したバスは町中をしばらく走り、しだいに景色は田園風景に変わっていった。
駅周辺であれば商店街やコンビニがあることが分かり、その辺りの札所を廻るには困らないだろう、、問題はそこから離れた田畑が広がるのどかな道や、人里離れた山の中を歩くことだ、、今走っている道を地図で追っていくと、秩父のおおまかな距離感やイメージが掴めてきた。
そうしているうちに〈栃谷〉というバス停に着いた。
そこから5分も歩けば、一番札所『四萬部寺』があるらしい。果たしてどんなお寺なのか、どんな旅が始まるのか、少し不安で少し焦っていて、少し緊張しながら私の〈巡礼〉は始まった。