インドではさまざまな顔をした子供に出会う。
途中のガートで沐浴の風景を眺めていると、水遊びをしていた子供達が寄ってきた。
“ガンガーにお金を投げてごらん!ラッキーなことが起きるよ!”
おそらく観光客に小銭を投げさせて、あとでガンガーに潜ってそのお金を拾い、自分達のものにしてしまおうという訳だ。なかなか可愛い手口である。
僕がお金を投げないことが分かると、“このお金をルピーに変えて…”と一人の子供が言ってきた。彼の手には日本の百円玉が二枚握られていた。
きっと以前、日本の観光客がガンガーに投げ入れたものだった。
今の僕には日本円は必要無かったが、きっとその子は両替してくれる日本人をずっと待っていたのだろう。そんな気無げな姿を想像すると、とても愛おしくなってルピーに両替してあげることにした。
しかも70ルピーという、むしろ僕が損するようなレートで…
“これは君にとってグッドなレートなんだよ!僕が両替屋でラッキーだったな。”
これまでインドで何度もボラれたが、子供相手にこっちが得する必要は無い。思いがけない大金を手にした子供は、喜んで走り去った。
日本で買ってきた飴も、子供達にあげたらとても喜んだ。
そんなときは持っている飴が無くなるくらい、次から次へと子供達が寄ってきた。
本当に貧しいだろう子供から〈バクシーシ〉を求められたら、ポケットに入っていた小銭を渡したこともあった。
しつこく観光客に付きまとう子供もいる。ガイドをしたからと “20ルピーよこせ!”と言ってくる子供もいる。僕も腹を立てキツい言葉で返す。それでも分からなければ、最後は完全にその子供を無視をする。悲しいことだがそれしか方法が無いのだ。
路地を歩いていると、遊んでいた子供が、“写真を撮って~”と言ってくることもある。それがまた可愛いかった。“ナマステ~”というポーズで写真を撮った。
お礼に飴をあげようと思ったら、地面に落としてしまった。それを拾って渡そうとすると、それを見ていた男性が “それを地面に捨てろ…”と言う。よく状況が分からずにいると、彼は持っていた水差しで僕の手と飴を洗い流してくれた。
インド人にとって地面は不浄な場所だ。土を触る仕事の人は、身分〈カースト〉が低いと聞いたことがある。そのため、おそらくガンガーで汲んだその水で不浄な手を洗い流してくれたのだった。