ガートを眺めていたら二人の青年に話しかけられた。
ヴァラナシに住んでいるようで、身なりがきれいで上手な英語を話した。
“ヴァラナシは初めてか?”、“何日間居るんだ?”そんなことを尋ねてきた。
彼らと話している間にも、“ボートに乗らないか?”と客引きが話し掛けてくる。
僕は “ちょっと客引きがしつこすぎて参っている…”そんなことを笑いながら愚痴った。
彼らに女神について聞いてみることにした。
“カーリーを見たいんだけど、ヴァラナシにカーリーの寺院はあるのかな?”
“ある”と彼らは答えた。どこにあるのか尋ねると、場所は複雑で教えにくいらしかった。
場所は分からないが、カーリーの寺院はヴァラナシのどこかに確かに存在するのだ。
僕はとても興奮した。
“何で女神を見たいんだ?” 彼らに尋ねられた。
遠い日本からやって来て、わざわざ凶暴で苦しみの象徴である女神を見たいという日本人を不思議に思ったのだろう。
僕は本を読んで興味を持ったことを話して、知ったような口調で答えた。
“インドの女神は病気にかかって飢えて苦しんでいる。そしてすごく怒っている。それなのに人間に乳を与えている。きっと女神はインドの母だ。それを見てみたいんだ…”
すると青年の一人は、客引きの男性の足を見て “彼もそうだ”と答えた。
さっきまで“50ルピーでボートに乗らないか?”としつこく付きまとってきたボート乗りの男性の足を見てみると、病気を患っているようで足は腫れて少し変形していた。
僕の目の前に居る男性もまた病気なのだ…
僕は何も答えられなかった。
ガートを去ろうと階段を上っていると、座り込んでいるたくさんの物乞いの人が見えた。
飢えて病気を患っている人々がたくさん見えた。