Atlantic Ocean

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この日、大西洋をはじめて見た。

〈ニューヨークと海〉どこか似つかない感じだが、ニューヨークに来たからには訪れてみたかった。この“コニー・アイランド”はブルックリンの南端に位置している半島で、大西洋に面したビーチには遊園地もある。地下鉄に乗ってしまえばマンハッタンから1時間で来れる小さなリゾートだ。ニューヨーク出身のミュージシャンのルー・リードが、この“コニー・アイランド”のことを歌っている。

考えてみると、大西洋ってなかなかお目にかかれるものじゃない。

大西洋を見るためには、私のように北米大陸の東側に来なければならないし、南米大陸でもアルゼンチンとかブラジルのような東側にある国に訪れなくてはならないだろう。またはヨーロッパに渡って大陸の西の端にでも行けば大西洋を望むことが可能だし、好奇心さえあれば、アフリカ大陸からだって大西洋を眺めることが出来るはずだ。

しかしそれは、これから旅をしていく数ヶ月の間に、偶然にも私自身がそのような旅をしてしまうことになる。

それはブラジルのリオデジャネイロで、強烈な太陽を浴びながらブラジル女の惜しげもない肉体を眺めたイパネマ・ビーチであったり、あるときはヨーロッパの最西端、ポルトガルのロカ岬から眺めた紺碧の海であったり、またあるときは、モロッコの灼熱の大地を、タンジールから迷宮都市フェズへ向かうサウナのようなバスから確かに見えた大西洋だったりした。

私がはじめて見たニューヨークの大西洋は、どこか寂しげで、でも美しかった。

シーズンオフの人気のない海はただ風が強くて、ボードウォークを歩いている人間なんてどうせ暇を持て余している連中だけだ。バーが一軒オープンしていたがこんなところで一息つきたいとは思わない。遊び相手がいない遊園地の遊具が、風に揺られて軋む音が聞こえる。
黒い帽子、黒い服のジューイッシュの男性が一人、ビーチを歩いている。

どこか寂しいと思ったのは、それだけじゃなかった。

ニューヨークが春を迎える前でまだ寒かったこと、一人旅を始めたばかりでどこか感傷的だったこと、しかしそれは“寂しさ”の理由ではなかった。ニューヨークで一週間過ごしてみて感じてきたのは、私が作り上げてきたスタイリッシュで洗練された都会のニューヨークのイメージが、見事に崩れ落ちていくことだった。街を歩くたびに、地下鉄に乗るたびに、郊外へと足を延ばすたびに、想像していたニューヨークが姿を消していった。それがどこか寂しかったんだろうと思う。

代わりに、私が一週間そこでじっくり見えてきたニューヨークは、どこか人間臭くて、人間がこの街でしっかりと地に足を付けて、人間が力強く生きているというものだった。

私が見てきたニューヨークはほんの一部分かもしれない。
しかし私はその部分を知ることが出来て本当に良かったと思っている。心のどこかでそれを見てみたいという気持ちがあったのかもしれない。

どちらかと言えば、そんなニューヨークの方が、私は好きだ。
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by francis-sp | 2008-06-29 00:50 | A day in the life


音楽、旅、本、サッカー、日常などをテーマにfrancisが気ままテキトーに語っています。本でも読むような感じで、ゆっくり見てくれたら嬉しいです。


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