素敵なガートを見つけた。
〈Tulsi Ghat〉という、街からすこし離れたところにあるガートだ。
朝からまともに食事をしていないことに気づき、〈ターリー〉も食べ飽きていたので、他に旨そうな店はないか探していた。当てもなく歩いていると、サンスクリッド語で書かれた緑色の標識を見つけた。この路地を進んでいけば沐浴場があるはずだ。
これまでこんな標識をガートの入り口でよく見かけていたのだ。
ガートがあると、ついつい寄りたくなってしまう。
路地を進むと、民家や学校があってとてものどかな雰囲気だった。地元の人は僕のような外国人が歩いていても、とりわけ関心を払わない。天気もよくのんびりとした昼下がりというところである。
これまでの喧騒とはかけ離れた、インドではじめて歩くような路だった。
その路の終点は、やはりガートだった。
猿や山羊みたいな動物が木陰で休んでいる。
人も少なく、家族連れがガンガーで沐浴している。
太ったサドゥーが沐浴を終えて、住処に戻ってきたようだ。
ここには客引きも土産物屋もいない。そして何よりも誰も僕に関心を払わない。
おそらくここは、地元の人しか来ないような沐浴場だった。
ここならゆっくりガンガーを眺めていられる。
僕はどっかりと腰を下ろし、しばらく沐浴をしている女性を眺めていた。
ヴァラナシに来て、はじめて静かな場所でゆっくりとガンガーを眺めることができた。